不妊症「不妊症の原因」
不妊症の原因
妊娠成立のメカニズムを簡略に整理すると、
①卵巣から卵子が排卵される⇒②精子が卵管に到達する⇒③卵管内で卵子と精子が受精する⇒④受精卵が子宮に運ばれ、子宮内膜に着床する、という過程を踏みます。
妊娠の成立には女性側の条件が多く、女性の不妊原因は多種多様です。
しかし、不妊原因の男女比は女性約6割、男性約4割ともいわれていて、男性に原因があることも多いのです。
女性因子
●卵管因子:不妊原因の約30%を占めています。
卵管は卵子と精子が受精する大変重要な場所です。その卵管が細くなったり(狭窄)、詰まったり(閉塞)していると、卵子と精子が出会えない、出会って受精卵となっても子宮に戻れないなど、不妊の重要な原因になります。
卵管狭窄や閉塞の主な原因には、子宮内膜症およびクラミジア感染症があります。
また、最近は、卵巣から排卵された卵子を卵管采(卵管の先端部分)がうまくピックアップできない「ピックアップ障害」が、原因不明不妊の原因として指摘されています。
●排卵因子:不妊原因の約25%を占めています。
赤ちゃんの素である受精卵は、卵子と精子が受精してできる新しい生命体です。ですから卵巣から受精能の高い成熟した卵子が排卵されることが、妊娠成立の必須条件です。このため、排卵障害(排卵そのものがない/卵子が未成熟なまま排卵されるなど)は、不妊の重要な原因になります。
排卵障害の主な原因には、視床下部性排卵障害、卵巣性排卵障害、多嚢胞性卵巣症候群(OHSS)、高プロラクチン血症、黄体機能不全などがあります。
●子宮因子:不妊原因の約5%です。
妊娠は、子宮の内膜に受精卵が着床(接着して根づくこと)することで成立します。もし、子宮に子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮奇形などの異常があると、着床できないことがあります。また、黄体機能不全などのホルモン因子によって、子宮内膜の受精卵受け入れ態勢が十分に整っていないと、不妊の原因になる場合があります。
●頸管因子:排卵期の頸管粘液の性状が不妊原因になることがあります。
子宮は腟に続く子宮頸部と、受精卵が着床し、胎児として発育する子宮体部からできています。子宮頸部は筒状の管になっているので、子宮頸管ともいいます。
子宮頸管からは頸管粘液が分泌され、排卵期になると精子が通りやすい性状に変化します。しかし、頸管粘液の分泌量が不十分だったり、適切な性状にならない場合には、精子の通過性が阻害されて、不妊の原因になる場合があります。
●免疫因子:夫の精子を不動化する抗精子抗体が不妊の原因になります。
女性の中には夫の精子を不動化する抗精子抗体をもっている方がいます。免疫異常のひとつなので、免疫因子といいます。
抗精子抗体は子宮頸管や卵管で分泌されるため、精子は卵管に到達できない、卵管に到達しても運動性が阻害されて卵子に受精できないなど、不妊の原因になります。なお、抗精子抗体が不妊原因の場合は、多くの場合、体外受精の対象となります。
男性因子
●造精機能障害:男性不妊のほとんどを占めています。
欠精子症(精子数が少ない)・精子無力症(運動率が低い)・奇形精子症(精子の奇形率が高い)など、正常精子を作る働きに問題があることを造精機能障害といいます。
男性不妊の原因の9割は造精機能障害で、そのうち約7割は原因が不明です(特発性造精機能障害)。
造精機能障害は精液検査で簡単にわかります。一方、性交を行う力と造精機能障害はまったく別のものなので、自分に不妊原因があると想像もできない男性も多いのですが、不妊原因の4割は男性に原因があります。精液検査は必ず受ける必要があります。
●精索静脈瘤:造精機能障害の原因になっていることがあります。
精子は精巣で作られますが、精索静脈瘤といって精巣の静脈がうっ血しているために、精子を作る力が障害されていることがあります。精索静脈瘤は手術で治療することができ、術後に造精機能障害が改善されることも多くあります。
●ED:性交障害のことをいいます。
原因はストレスなどの心理的原因、過労、過度の飲酒、喫煙などのほか、糖尿病や高血圧が原因になっている場合もあります。生活習慣の改善や心理カウンセリングなどで軽減されることもありますが、バイアグラなどの薬剤を用いることもあります。
原因不明不妊
不妊症のうち、約1~2割は原因不明不妊といわれていますが、原因がないのではなく、まだ原因が突き止められていないものと考えられます。また、最近は、原因として、卵管采のピックアップ障害および加齢が注目されています。
原因不明不妊は体外受精の対象となり、卵管采のピックアップ障害の場合はこの方法で妊娠に結びつくケースが増えています。しかし、加齢によって卵子や精子の受精能が低下している場合には、若いうちに子づくりに励むのが最善の対策となります。